雨樋の修理はどこに頼む?|法令が二メートルで引いた線と、見積もりで先に見る四項目
雨樋が外れている、割れている、雨のたびに変な場所から水が落ちる。どこに頼むかを調べ始める前に、決まってしまっていることが一つあります。雨樋の位置は、法令が「墜落の危険がある高さ」と定めた高さの上にあります。
それが、自分で登るという選択肢の性格を決めます。そして業者を比べるときに、金額より先に見るべき項目も決めます。この記事では、労働安全衛生規則・建設業法・民法の条文にあたって、頼み先を決める材料を整理します。
費用は依頼先で大きく変わります。相場の確認は、無料でできる複数社見積もりの比較が近道です。
無料でまとめて見積もり ▶まず、雨樋の不具合は三つに分かれる
頼み先は「雨樋屋さん」で一本化されているわけではありません。何が起きているかで、必要な作業も、まとめて頼むべきかどうかも変わります。
| 状態 | 作業の中身 | まとめて考えるもの |
|---|---|---|
| 詰まり(落ち葉・土砂・鳥の巣) | 清掃と流れの確認 | 落ち葉よけの設置を同時に検討するか |
| 継手の外れ・金具のゆるみ・勾配のずれ | 部分的な固定・交換 | 同じ面の他の金具も同時に見るか |
| 割れ・破断・積雪による変形 | 一部または全体の交換 | 屋根や外壁の工事と足場を共用できるか |
この三つ目が、頼み先の判断をいちばん左右します。足場が要る工事なら、足場を一度で済ませられる工事が他にないかを先に確認したほうがいいからです。屋根や外壁の塗装を数年以内に考えているなら、その順番を先に決める話になります。
法令は「二メートル」で線を引いている
労働安全衛生規則には、高さについての具体的な数字が書かれています。
第五百十八条第一項「事業者は、高さが二メートル以上の箇所(作業床の端、開口部等を除く。)で作業を行なう場合において墜落により労働者に危険を及ぼすおそれのあるときは、足場を組み立てる等の方法により作業床を設けなければならない。」
同条第二項は、作業床を設けることが困難なときの代替として、防網を張ることと、要求性能墜落制止用器具を使用させることを挙げています。第五百十九条第一項は、高さ二メートル以上の作業床の端や開口部に囲い・手すり・覆いを設けることを求めています。
天候についても定めがあります。
第五百二十二条「事業者は、高さが二メートル以上の箇所で作業を行う場合において、強風、大雨、大雪等の悪天候のため、当該作業の実施について危険が予想されるときは、当該作業を行わせてはならない。」
屋根の上に乗る場合には、材質による条文もあります。
第五百二十四条「事業者は、スレート、木毛板等の材料でふかれた屋根の上で作業を行なう場合において、踏み抜きにより労働者に危険を及ぼすおそれのあるときは、幅が三十センチメートル以上の歩み板を設け、防網を張る等踏み抜きによる労働者の危険を防止するための措置を講じなければならない。」
ここで大事なのは、これらは事業者と労働者にかかる規則で、自分の家を自分で直す人に直接かかるものではないということです。個人がはしごに登っても、この規則の違反にはなりません。
それでも読む意味は二つあります。ひとつは、国が「二メートル以上は墜落の危険がある」と定めている高さに、自分は装備なしで登ろうとしているという事実です。雨樋は二階なら地上から五メートル前後、一階の軒先でも二メートルを超えることがあります。もうひとつは、業者の見積もりを読む物差しになることです。
出典:e-Gov法令検索 労働安全衛生規則(昭和四十七年労働省令第三十二号)第五百十八条・第五百十九条・第五百二十二条・第五百二十四条(2026-09-05 確認)
見積もりで先に見るのは、金額ではなく足場
相見積もりを取ると、同じ「雨樋交換」で金額が大きく開くことがあります。その差の多くは、作業そのものではなく足場を組むかどうかから来ます。
だから比べる前に、次を揃えてください。金額を並べるのはそのあとです。
- 足場の有無と種類。見積書に足場の項目があるか。無いなら、どういう方法で高所の作業をするのかを書かせる。
- 作業範囲。雨樋のどこからどこまでか。金具は替えるのか、既存を使い回すのか。
- 天候の扱い。強風・大雨の日にどうするか。第五百二十二条どおりに中止する業者かどうかが分かります。
- 屋根に乗るかどうか。乗るなら屋根材は何か。スレートなら第五百二十四条の話になります。
- 保険。労災と、請負業者賠償責任保険に入っているか。落下物で隣家を傷つけたときに関わります。
- 他の工事と足場を共用できるか。屋根・外壁の予定があるなら、その順番を含めて相談する。
屋根まわり全体の話としては雨漏り修理の費用も合わせて確認してください。
「建設業の許可」は必須ではない。それでも聞く意味がある
頼み先を調べていると、建設業の許可があるかどうかが出てきます。ここは誤解されやすいところです。
建設業法第三条第一項ただし書「政令で定める軽微な建設工事のみを請け負うことを営業とする者は、この限りでない。」
その「軽微な建設工事」の中身は施行令にあります。
建設業法施行令第一条の二第一項「法第三条第一項ただし書の政令で定める軽微な建設工事は、工事一件の請負代金の額が五百万円(当該建設工事が建築一式工事である場合にあつては、千五百万円)に満たない工事又は建築一式工事のうち延べ面積が百五十平方メートルに満たない木造住宅を建設する工事とする。」
雨樋の修理は、ふつうこの金額に収まります。つまり許可が無くても合法に請け負えます。「許可がないから怪しい」という話ではありません。
ただし同条第二項に、続きがあります。
「前項の請負代金の額は、同一の建設業を営む者が工事の完成を二以上の契約に分割して請け負うときは、各契約の請負代金の額の合計額とする。ただし、正当な理由に基いて契約を分割したときは、この限りでない。」
分けて契約しても合計で見る、という規定です。屋根・外壁・雨樋をまとめて頼むような場面で効いてきます。許可の有無そのものより、規模が大きくなったときにどう扱われるかを知っておくほうが実用的です。
出典:e-Gov法令検索 建設業法 第三条/建設業法施行令 第一条の二(2026-09-05 確認)
放置すると、隣の家との話になる
雨樋が機能していないと、屋根に落ちた雨がそのまま地面へ、あるいは隣の敷地へ落ちます。民法にはこれに触れる条文があります。
民法第二百十八条「土地の所有者は、直接に雨水を隣地に注ぐ構造の屋根その他の工作物を設けてはならない。」
設けてはならない、という書き方なので、壊れて結果的にそうなっている状態がそのまま違反になるとは限りません。ただ法律が禁じている状態に、建物が近づいていくということです。隣地から自然に流れてくる水については、逆向きの条文もあります。
民法第二百十四条「土地の所有者は、隣地から水が自然に流れて来るのを妨げてはならない。」
雨水の落ち方は、隣家との関係で持ち出されやすい論点です。直すかどうかを自分の都合だけで決められる問題ではなくなるので、外れたまま何年も置かないほうがいい、という理由になります。
出典:e-Gov法令検索 民法 第二百十四条・第二百十八条(2026-09-05 確認)
よくある質問
Q. はしごで届く高さなら、自分でやってもいいですか。
A. 労働安全衛生規則は事業者にかかる規則なので、自分の家を自分で直すことを禁じてはいません。ただしその規則が「二メートル以上は作業床が要る」と定めている高さだという事実は変わりません。判断材料として書いておきます。
Q. 「火災保険で直せます」と言われました。
A. 風災などの補償の対象になることはありますが、対象かどうかは加入している約款次第なので、この記事では断定しません。先に保険が使えると言ってくる業者には、どの条項に当たるのか、被害の原因が何かを示す資料は何かを聞いてください。判断するのは保険会社です。
Q. 屋根の塗装も考えています。順番はどうすべきですか。
A. どちらも足場が要るなら、足場を共用できる順番があります。見積もりの段階で両方を出してもらい、別々に頼んだ場合と比べてください。ただし契約を分けたときの扱いは建設業法施行令第一条の二第二項のとおりなので、規模が大きいときは合計額で見られます。
Q. 雨樋の掃除だけなら誰でもできますか。
A. 作業の中身は単純ですが、行う位置は変わりません。二メートル以上の高さで行う作業だという点は、交換でも清掃でも同じです。
この記事で確認できなかったこと
雨樋修理の金額は書いていません。公的機関が公表している価格を確認できなかったためです。長さ・階数・足場の有無で変わるので、定価表がそのまま自分の家に当てはまりません。
火災保険で補償されるかどうかも、約款によるため断定していません。業種別の得意・不得意についても、公的な調査を確認できなかったので順位づけはしていません。代わりに、見積書で確認できる項目を挙げました。
まとめ
雨樋の修理をどこに頼むかは、足場が要る工事かどうかで先に分かれます。労働安全衛生規則は高さ二メートル以上の作業に作業床を求め、悪天候での作業を禁じ、スレート屋根の上では幅三十センチメートル以上の歩み板を求めています。この規則は事業者にかかるものですが、見積書がその体制になっているかを見る物差しになります。
建設業の許可は、五百万円未満の工事なら無くても請け負えます。許可の有無で切り捨てる必要はありませんが、屋根や外壁とまとめるなら、契約を分けても合計で見るという規定があることを覚えておいてください。
そして放置は隣地の問題に育ちます。民法第二百十八条が禁じている状態に近づくからです。金額を比べる前に、足場・作業範囲・天候の扱い・保険の四つを揃える。それが雨樋の見積もりで最初にやることです。
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