オール電化で後悔する前に|安さの根拠だったプランは2016年に新規受付終了、燃料費調整に上限が無い
オール電化で後悔したという話の多くは、「思ったより電気代が下がらなかった」に行き着きます。ただ原因は使い方より先に、契約できるプランのほうが変わってしまったことにあります。ここは電力会社とガス会社が公表している資料で確かめられるので、まずそこから見ます。
以下は東京電力エナジーパートナー・経済産業省・東京ガスの公表資料に基づく整理です。エコキュートという機器そのものの是非(設置場所や運転音、補助金の条件)はエコキュートはやめとけ?後悔する3つの条件に分けて書いています。この記事は契約と生活の側の話です。
料金・キャンペーンの適用条件は、申込前に公式ページで確認してください。
公式の適用条件を確認 ▶「オール電化は安い」の根拠だったプランは、もう新しく入れない
東京電力エナジーパートナーは、料金プラン一覧のなかで2016年3月31日をもって新規加入受付を終了したプランを明示しています。そこに並んでいるのは次のものです。
- 電化上手
- おトクなナイト8・10
- 深夜電力
- ピークシフトプラン
- おまとめプラン
「電化上手」は、オール電化住宅の代表的な料金プランとして知られていたものです。夜間の安い電気でお湯を沸かして得をする、という説明の前提だったプランが、2016年で新規受付を終えています。いま検討している人が、当時と同じ条件で契約することはできません。
さらに、その後継にあたるスマートライフプランについても、同社は「現在新規ご加入の受付を停止しております」と記載しています。ただしスマートライフS/Lは引き続き新規加入の申込みが可能で、設備状況によってスマートライフプランが適用される場合もあるとされています。
ここが後悔の入口になりやすいところです。ネット上の「オール電化にしたら年間◯万円安くなった」という話は、それがいつの、どのプランでの話なのかが書かれていないことが少なくありません。2016年より前に電化上手で契約した家の実績を、これから契約する家がそのまま再現できるとは限らない、ということです。
見積もりや光熱費の試算を受け取ったら、いま自分が新規で契約できるプラン名で計算されているかを必ず確かめてください。プラン名が書かれていない試算表は、根拠を確認しようがありません。
出典:東京電力エナジーパートナー 電気の料金プラン一覧(2026-09-05確認)
オール電化向けは「自由料金」で、燃料費調整に上限が無い
これは後悔の話のなかで、いちばん知られていない構造だと思います。電気料金には燃料費調整額が含まれます。原油や液化天然ガスなどの価格から算出され、毎月変動する調整額です。
東京電力エナジーパートナーは、この調整額の扱いがプランの種類で違うと説明しています。規制料金プラン(従量電灯などの特定小売供給約款にもとづく料金プラン)には加算される燃料費調整額の変動単価に上限がある一方、自由料金プラン(スタンダードプランや電化上手などの電気需給約款[低圧]にもとづく料金プラン)においては上限がありません。そのため燃料価格が高騰した場合、自由料金プランのほうが燃料費調整額が高くなる可能性がある、とされています。
オール電化向けのプランはこの自由料金の側にあります。燃料が上がったときに、上限で止まる仕組みが働きません。ガス併用のまま従量電灯を使っている家とは、値上がりの当たり方そのものが違います。「オール電化は電気代が高い」と言われる年があるのは、使い方が悪いからではなく、この上限の有無が効いている場合があります。
同社は影響の大きさの例も示しています。世界的な燃料価格高騰の影響で、関東エリアのスタンダードSの30A・260kWhモデルでは、2023年1月の電気料金が燃料費調整の適用がない場合と比べて1.4倍程度になった、というものです。これはスタンダードSの例であって、オール電化プランの数字ではありません。それでも、燃料費調整が請求額をどれだけ動かしうるかの目安にはなります。
検討している段階でできることは、提示されたプランが規制料金か自由料金かを聞くことです。約款の名前(特定小売供給約款か、電気需給約款か)まで確認できれば確実です。ここは営業担当者に聞けばその場で答えが出ます。
出典:東京電力エナジーパートナー 電気の料金プラン一覧(2026-09-05確認)
電気に一本化すると、再エネ賦課金の対象量も増える
もうひとつ、プランの選び方では避けられない項目があります。再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)です。
資源エネルギー庁は、再エネ賦課金の特徴として「電気を使うすべての方にご負担いただくものです」「電気料金の一部となっています」「ご負担額は電気の使用量に比例します」「再エネ賦課金の単価は、全国一律の単価になるよう調整を行います」と説明しています。単価は毎年度、経済産業大臣が決めます。
経済産業省の2026年3月19日の発表によれば、2026年度の賦課金単価は1kWhあたり4.18円です。同省は目安として、1か月の電力使用量が400kWhの需要家モデル(総務省家計調査に基づく一般的な世帯の1か月の電力使用量)の負担額を月額1,672円、年額20,064円と示しています。この単価は2026年5月検針分の電気料金から2027年4月検針分の電気料金まで適用されます。
ここでオール電化の話に戻ります。オール電化は、それまでガスでまかなっていた給湯・調理・暖房を電気に移す選択です。移した分だけ電気の使用量(kWh)が増え、再エネ賦課金は使用量に比例するので、賦課金の負担も同じ割合で増えます。使用量が1.5倍になれば賦課金も1.5倍、2倍になれば2倍です。そしてガス料金には再エネ賦課金は含まれません。ガスから電気へ移した分は、賦課金がかかる側へ移動したことになります。
これは節約の工夫でどうにかなる項目ではありません。単価は国が決め、全国一律で、使った分だけかかります。オール電化にしたあとの電気代を比べるときは、基本料金と従量料金だけでなく、燃料費調整額と再エネ賦課金を含めた請求額の合計で比べてください。見積書に「電力量料金」しか書かれていない場合、比較の土台が揃っていません。
なお、オール電化にしたとき電気の使用量が実際に何kWh増えるかは、設備・世帯人数・在宅時間で大きく変わるため、この記事では試算していません。比例するという関係だけを書いています。
出典:資源エネルギー庁 なっとく!再生可能エネルギー 制度の概要/経済産業省 2026年度以降の買取価格等と2026年度の賦課金単価を設定します(2026年3月19日)(2026-09-05確認)
後悔を分けるのは「戻せるか」
ガス併用の家は、給湯器が寿命を迎えたときにガス給湯器・エコジョーズ・エコキュートのどれにするかを選び直せます。比較の材料はガス給湯器とエコキュートの比較にまとめています。
いっぽうオール電化にしてガスの契約を切ると、次に迷ったときの選択肢はその時点で狭くなります。ガスをやめる側の手続きも、思っているより一方通行です。
東京ガスは、解約について次のように記載しています。ガスが止まるのは係員が訪問してガスメーターを閉止する作業を行った時点で、立会いが必要になる場合があります。また、長期不在などによる一時的な停止と再開についても、ガスの契約が一度解約となるため、解約後1年間は「一般料金」以外の料金メニューへの再手続きができない場合があると注記されています。
つまり「やめてみて、合わなければ戻せばいい」と考えていると、戻ったときの条件が元と同じではない可能性があります。止めるのは1日で終わりますが、元に戻すのは同じ速さでは進みません。
これは東京ガスの記載であって、ガス会社ごとに扱いは異なります。ご自身の契約先の記載を確認してください。また、ガス管や給湯器の撤去にかかる費用については、公表されている金額を確認できなかったため、この記事では金額を書いていません。
出典:東京ガス ガス・電気の解約(停止)のお手続き(2026-09-05確認)
決める前に確かめる6つのこと
ここまでの内容を、そのまま質問できる形にしました。いずれも契約先の電力会社・ガス会社、または見積もりを出した業者に聞けば分かります。推測で埋めず、相手に答えてもらってください。
- いま自分が新規で契約できるオール電化向けプランの名前と単価は何か。受付を終了したプランの単価で試算されていないか。
- そのプランは規制料金か自由料金か。燃料費調整額の変動単価に上限があるかどうか。
- 試算は請求額の合計で出ているか。燃料費調整額と再エネ賦課金が入っているか、入っていないか。
- いまの生活で、電気を使う時間帯が夜に寄せられるか。在宅時間が昼に集中している家では、夜間が安いプランの前提が崩れます。
- ガスをやめた場合、再びガスを引くときに何が必要か。工事、期間、そのとき選べる料金メニュー。
- 設置場所は隣家の窓や寝室から離れているか。屋外機の置き場所についてはエコキュートはやめとけ?後悔する3つの条件で公的資料をもとに整理しています。
「オール電化は安い」も「オール電化は高い」も、どちらも条件つきの話です。その条件のほうが2016年以降に変わっているので、結論だけを引き継いだ情報を読むと判断を誤ります。
この記事で確認できなかったこと
受付終了の日付とプラン名、燃料費調整の上限の有無は、いずれも東京電力エナジーパートナーの公表資料に基づくものです。他の電力会社の扱いは確認していません。お住まいの地域の電力会社の料金プラン一覧で、同じ点を確かめてください。
ガスの解約と再開の条件は東京ガスの記載に基づくもので、他のガス会社の扱いは確認していません。
オール電化にした場合の電気代がいくらになるか、電気の使用量が何kWh増えるかは、設備・世帯人数・在宅時間で変わるため試算していません。各社の料金シミュレーションで確かめてください。
ガス管や給湯設備の撤去費用、ガスを再度引く場合の工事費についても、公表されている金額を確認できなかったため記載していません。
まとめ
オール電化の後悔は、機器の性能より契約条件の変化から来ています。安さの根拠だった電化上手・深夜電力などは2016年3月31日で新規受付が終わり、後継のスマートライフプランも新規受付を停止しています。古い成功談の前提が、いまの契約者には適用されません。
そしてオール電化向けは自由料金プランなので、燃料費調整額の変動単価に上限がありません。燃料が上がったときに止まる仕組みが無い側にいる、ということです。さらに再エネ賦課金は使用量に比例するため、電気に一本化した分だけ賦課金の負担も増えます。単価は国が全国一律で決めるので、使い方の工夫では動きません。
ガスをやめる判断は、止めるのは早く、戻すのは遅い種類の判断です。検討するなら、古い料金表ではなくいま自分が契約できるプラン名で、請求額の合計で試算し、そのプランが規制料金か自由料金かを確かめてから決めてください。
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