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FIG.219 — リフォーム全般

見積書の「アスベスト調査費」は削れない|法律が発注者に費用の負担を求めている

公開 2026-09-05|更新 2026-09-05|修繕ナビ編集部

解体やリフォームの見積書に「石綿事前調査」「アスベスト調査費」という行が入っていることがあります。工事そのものではないので、削れないかと思う項目です。

結論から書くと、削れません。二つの法律が別々にこの調査を義務づけていて、しかも片方には発注者が費用を適正に負担せよと書かれています。この記事では、石綿障害予防規則と大気汚染防止法の条文を読んで、その中身を整理します。

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同じ工事に、二つの法律が別々にかかる

アスベストの事前調査は一本の制度ではありません。守ろうとしているものが違う二つの規定が、同じ工事に同時にかかります。

石綿障害予防規則大気汚染防止法
守る対象労働者の健康大気への飛散
義務を負う人事業者元請業者(自分で施工するなら自主施工者)
調査の方法全ての材料について、設計図書等の文書の確認と目視の両方設計図書その他の書面による調査と、特定建築材料の有無の目視による調査
発注者への説明規定なし書面を交付して説明しなければならない
報告先所轄労働基準監督署長届出対象になる工事は都道府県知事

つまり「うちは小規模だから関係ない」で片づく話ではありません。調査そのものは規模を問わず前提になっていて、規模で変わるのは報告や届出のほうです。

「あらかじめ」「全ての材料」と書いてある

まず労働側の規定です。

石綿障害予防規則第3条第1項「事業者は、建築物、工作物又は船舶(鋼製の船舶に限る。)の解体又は改修(封じ込め又は囲い込みを含む。)の作業を行うときは、石綿による労働者の健康障害を防止するため、あらかじめ、当該建築物、工作物又は船舶について、石綿等の使用の有無を調査しなければならない。」

効いているのは二か所です。「あらかじめ」なので工事の前に終わっていなければならず、「封じ込め又は囲い込みを含む」なので、剥がさない工事でも対象になります。

調べ方も決まっています。

同条第2項「事前調査は、解体等対象建築物等の全ての材料について次に掲げる方法により行わなければならない。一 設計図書等の文書を確認する方法。二 目視により確認する方法。」

全ての材料について、書類と目視の両方です。どちらか一方ではありません。

やる人にも条件があります。

同条第4項「事業者は、事前調査については、……適切に当該調査を実施するために必要な知識を有する者として厚生労働大臣が定めるものに行わせなければならない。」

そして、調べても分からなかったときの続きも書かれています。

同条第5項「事業者は、事前調査を行ったにもかかわらず、当該解体等対象建築物等について石綿等の使用の有無が明らかとならなかったときは、石綿等の使用の有無について、分析による調査を行わなければならない。」

ただし書きで、石綿等が使用されているものとみなして工事を進める道も用意されています。分析にかけるか、あるものとして扱うか。ここが見積もりの分岐点になります。

出典:e-Gov法令検索 石綿障害予防規則 第3条(2026-09-05確認)

報告が要るのは、解体80平方メートル・改修100万円から

調査結果を役所に報告する義務は、工事の規模で線が引かれています。

同規則第4条の2第1項「事業者は、次のいずれかの工事を行おうとするときは、あらかじめ、電子情報処理組織を使用して、次項に掲げる事項を所轄労働基準監督署長に報告しなければならない。一 建築物の解体工事(当該工事に係る部分の床面積の合計が八十平方メートル以上であるものに限る。) 二 建築物の改修工事(当該工事の請負代金の額が百万円以上であるものに限る。)」

同項は続けて、工作物の解体・改修(請負代金100万円以上)と、船舶(総トン数20トン以上)も挙げています。

リフォームでも100万円を超えれば報告の対象になる、というのがここの要点です。解体だけの話ではありません。

そしてこの「80平方メートル」は、家の解体で届出が義務になる80平方メートルと同じ数字ですが、まったく別の制度です。並べます。

建設リサイクル法石綿障害予防規則
線引き建築物の解体で床面積80平方メートル以上建築物の解体で床面積80平方メートル以上/改修は請負代金100万円以上
手続きをする人発注者事業者
相手都道府県知事所轄労働基準監督署長
中身分別解体等の計画の届出事前調査結果の報告

同じ数字が出てくるので混ざりやすいところです。どちらか一方をやれば済む、という関係ではありません。

出典:同規則 第4条の2第1項(2026-09-05確認)

発注者に「費用を適正に負担せよ」と書いてある

ここが、見積書の行を消せない理由そのものです。大気汚染防止法を見ます。

大気汚染防止法第18条の15第1項(要旨)建築物等を解体し、改造し、又は補修する作業を伴う建設工事(解体等工事)の元請業者は、その工事が特定工事に該当するか否かについて、設計図書その他の書面による調査と、特定建築材料の有無の目視による調査その他の方法による調査を行うとともに、当該解体等工事の発注者に対し、調査の結果などを記載した書面を交付して説明しなければならない。

元請業者には調査する義務と、発注者に書面で説明する義務があります。だから調査結果の書面は、頼まなくても出てくるはずのものです。

そして次の項が本題です。

同条第2項「解体等工事の発注者は、当該解体等工事の元請業者が行う前項の規定による調査に要する費用を適正に負担することその他当該調査に関し必要な措置を講ずることにより、当該調査に協力しなければならない。」

費用を適正に負担すること、と条文に書かれています。値切る対象として想定されていない項目だ、ということです。

逆に言えば、この行が入っていない見積書のほうが不自然です。安く見えても、あとで追加になるか、調査をしていないかのどちらかになります。

元請業者には記録の義務もあります。同条第3項は、調査に関する記録を作成し、その記録と説明の書面の写しを保存しなければならないと定めています。

出典:e-Gov法令検索 大気汚染防止法 第18条の15(2026-09-05確認)

自分で壊す場合も、逃げられない

業者に頼まず自分で解体する場合はどうか。ここにも条文があります。

同条第4項「解体等工事の自主施工者(解体等工事を請負契約によらないで自ら施工する者をいう。)は、当該解体等工事が特定工事に該当するか否かについて、第一項の環境省令で定める方法による調査を行うとともに、……当該調査に関する記録を作成し、これを保存しなければならない。」

請負契約によらないで自ら施工する人も、調査と記録の義務を負います。物置や小屋を自分で壊す、内装を自分で剥がす、といった場面が該当しうるところです。

出典:同法 第18条の15第4項(2026-09-05確認)

見積もりで確認する五つ

出典:e-Gov法令検索 石綿障害予防規則 第3条第4項・第4条の2第1項/大気汚染防止法 第18条の15第1項(2026-09-05確認)

よくある質問

Q. 築年数が新しいので関係ないのでは。
A. 石綿障害予防規則第3条第1項は着工年で対象を切っていません。同条第3項には、一定の年月日以降に着工した建築物等について確認方法を簡略にできる場合が並んでいますが、調査そのものが不要になるという書き方ではありません。

Q. 壁紙を貼り替えるだけでも必要ですか。
A. 第3条第1項の対象は「解体又は改修(封じ込め又は囲い込みを含む)の作業」です。どの作業がこれに当たるかは現場の判断になるので、この記事では線引きを断定しません。業者に、この工事が対象かどうかとその理由を聞いてください。

Q. 調査費を削ってもらえませんか。
A. 大気汚染防止法第18条の15第2項は、発注者に対し調査に要する費用を適正に負担することを求めています。削る交渉の対象として法律が想定していない項目です。

Q. 見積書にこの項目がありません。
A. 対象外なのか、調査が抜けているのかを確認してください。元請業者には調査結果を書面で交付して説明する義務があるので、その書面を求めれば分かります。

この記事で確認できなかったこと

調査費や除去費の金額は書いていません。公的機関が公表している価格を確認できなかったためです。建材の種類・面積・階数で変わるので、定価表がそのまま当てはまりません。

「厚生労働大臣が定めるもの」の具体的な資格名も、告示まで確認できなかったので挙げていません。大気汚染防止法第18条の17の届出対象特定工事について、届出の期限や様式も、この記事では条文の範囲を超えるので触れていません。工事が対象かどうかは、業者と自治体に確認してください。

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まとめ

アスベストの事前調査は、二つの法律が別々に義務づけています。石綿障害予防規則第3条は、解体・改修の前にあらかじめ、全ての材料を書類と目視の両方で調べることを求め、第4項でそれを行う人を限定し、第5項で分からなければ分析調査に進むことを求めています。

報告の線引きは解体は床面積で、改修は請負代金で引かれています(第4条の2第1項。数字は前の章に条文のまま引きました)。同じ80平方メートルでも、建設リサイクル法の届出とは手続きをする人も相手も別です。

そして大気汚染防止法第18条の15は、元請業者に調査と発注者への書面交付・説明を義務づけたうえで、第2項で発注者に「調査に要する費用を適正に負担すること」を求めています。だから見積書のこの行は消せません。消えている見積書のほうを疑ってください。

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