トイレの床が濡れる水漏れ|原因の切り分けと、負担するのは誰かを条文で確認
トイレの床が濡れているとき、拭いて終わりにしていいかどうかは、水がどこから来ているかで決まります。結露なら拭けば済みます。給水側から漏れているなら、拭いても止まりません。
そして床材が水を吸い始めると、次に濡れるのは階下の天井です。ここまで来ると、話は「修理の内容」から「誰が負担するか」に変わります。この記事では、金額より先に決めなければならない二つのこと、原因の切り分けと負担するのは誰かを整理します。後者は法律で決まっている部分があるので、条文にあたって確認しました。
費用は依頼先で大きく変わります。相場の確認は、無料でできる複数社見積もりの比較が近道です。
無料でまとめて見積もり ▶床が濡れる原因は、給水側・排水側・結露のどれか
トイレの床が濡れる原因は、水の出どころで大きく三つに分かれます。どれなのかで、自分で止められるかどうかが変わります。
| 水の出どころ | 濡れ方の特徴 | 止水栓を閉めると |
|---|---|---|
| 給水側(止水栓・給水管・給水ホースの接続部) | 使っていなくても濡れる。局所的で、拭いてもまた同じ場所に戻る | 止まることが多い |
| 排水側(便器と床の接合部、便器本体) | 水を流したあとに増える。においを伴うことがある | 止まらない |
| 結露(タンク・便器の表面) | 広く薄く濡れる。気温と水温の差が大きい時季・時間帯に出る | 止まらない |
切り分けの手順はこうです。まず床を完全に拭き取ってから、止水栓を閉めて数時間置きます。これで濡れが再発しなければ給水側です。再発するなら、次に一度だけ水を流して、流したあとに増えるかを見ます。増えるなら排水側の疑いが濃くなります。どちらでもなく、じわじわ全体が湿ってくるなら結露を疑う順番になります。
タンクの内部から便器へ流れ続けている場合は、床ではなく便器の中に水が落ちます。音で気づくことが多いので、トイレタンクの水漏れで切り分けてください。症状別の修理内容はトイレの水漏れ修理費用にまとめています。
「表面が乾いた」は、下地が乾いた根拠にならない
トイレの床によく使われるクッションフロアは、表面が塩化ビニルなので水を通しにくい素材です。ここが厄介なところで、継ぎ目や便器のまわりから下に入った水は、同じ理由で上にも抜けません。表面を拭いて乾いたように見えても、下地の合板が湿ったままということが起こります。
下地が濡れたままだと、床がやわらかく沈む、フローリングなら継ぎ目が浮く、といった変化が先に出ます。それより先に階下へ到達すれば、被害はもう自分の部屋の中では終わりません。床が濡れる水漏れを「そのうち直そう」の枠に入れてはいけない理由はここにあります。
賃貸なら、直す義務は原則として貸主にある
借りている部屋の場合、修繕の義務が誰にあるかは民法が定めています。
民法第六百六条第一項「賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。ただし、賃借人の責めに帰すべき事由によってその修繕が必要となったときは、この限りでない。」
つまり原則は貸主の負担で、借主の落ち度で壊れた場合だけ例外という構造です。給水管の劣化や便器の接合部のシール切れは、通常は借主の落ち度とは言いにくい部分にあたります。
そのうえで、借主には通知の義務があります。
民法第六百十五条「賃借物が修繕を要し、又は賃借物について権利を主張する者があるときは、賃借人は、遅滞なくその旨を賃貸人に通知しなければならない。」
ここが実務上いちばん効きます。連絡が遅れて被害が広がった分は、借主の落ち度として扱われる余地が出てきます。直せるかどうかにかかわらず、気づいた時点で管理会社か貸主に連絡することが、法律上の義務として書かれています。
あわせてシャワーの水漏れの原因と直し方も参考になります。
出典:e-Gov法令検索 民法(明治二十九年法律第八十九号)第六百六条・第六百十五条(2026-09-05 確認)
貸主が動かないとき、借主が自分で直せる二つの場合
連絡したのに手配されない、という状況も現実には起こります。この場合に借主が自分で修繕できる条件も、条文に書かれています。
民法第六百七条の二「賃借物の修繕が必要である場合において、次に掲げるときは、賃借人は、その修繕をすることができる。一 賃借人が賃貸人に修繕が必要である旨を通知し、又は賃貸人がその旨を知ったにもかかわらず、賃貸人が相当の期間内に必要な修繕をしないとき。二 急迫の事情があるとき。」
逆に読むと、通知もせずに自分で業者を呼ぶのは、この条文の枠の外です。床から水が噴き出しているような場面は第二号の「急迫の事情」にあたる余地がありますが、そうでないなら先に通知し、対応を待つ順番になります。
使えない期間の賃料についても定めがあります。
民法第六百十一条第一項「賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合において、それが賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、賃料は、その使用及び収益をすることができなくなった部分の割合に応じて、減額される。」
条文は「減額される」と書いてあります。請求して初めて減るのではなく、条文上は当然に減額される形です。ただし割合をどう計算するかは条文には書かれていないので、実際には貸主との話し合いになります。
出典:e-Gov法令検索 民法(明治二十九年法律第八十九号)第六百七条の二・第六百十一条(2026-09-05 確認)
分譲マンションで階下に漏らしたときの、意外な出発点
持ち家のマンションで下の階に水が回った場合、賠償の根拠になるのは工作物責任の条文です。
民法第七百十七条第一項「土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。」
第一次的には占有者、つまり住んでいる人が責任を負い、必要な注意をしていたことを示せた場合には所有者に移るという順番です。同条第三項には、ほかに責任を負う者がいるときの求償権も定められています。賃貸に出している部屋なら、住んでいる人と所有者が別になるので、この分岐が効いてきます。
そして分譲マンションには、これに重なる規定があります。
建物の区分所有等に関する法律第九条「建物の設置又は保存に瑕疵があることにより他人に損害を生じたときは、その瑕疵は、共用部分の設置又は保存にあるものと推定する。」
これは出発点を共用部分側に置く規定です。被害を受けた側が原因筧所を特定できなくても、まず共用部分の瑕疵として推定されます。専有部分が原因だと主張する側が、それを覆す材料を出す構図になります。
だから実際の分かれ目は、漏れているのが専有部分の中の設備なのか、共用の縦管なのかという一点に集約されます。原因の切り分けが、そのまま負担の切り分けになるということです。管理規約でどこまでを専有部分と定めているかも合わせて確認してください。
出典:e-Gov法令検索 民法 第七百十七条/建物の区分所有等に関する法律 第九条(2026-09-05 確認)
最初の三十分にやること
- 止水栓を閉める。トイレの止水栓が固くて回らないときは、家全体の元栓を閉めます。給水側なら、これで進行が止まります。
- 濡れている範囲を写真に撮る。時刻がわかる形で残します。あとで原因と負担の切り分けをするとき、いつからどこが濡れていたかが唯一の材料になります。
- 貸主・管理会社に連絡する。賃貸では民法第六百十五条の通知義務にあたります。分譲でも、共用部分が絡む可能性がある以上、管理組合・管理会社への連絡が先です。
- 階下に声をかける。自分の部屋の床で止まっているのか、もう下へ回っているのかで、その後の話がまったく変わります。
保険については、火災保険に付帯する個人賠償責任の特約や、水濡れの補償の対象になることがあります。ただし対象になるかどうかは約款次第なので、この記事では断定しません。管理会社と保険会社の両方に連絡してください。
その業者、水道局の指定を受けているか
床が濡れる原因が給水側にある場合、修理は給水装置工事になります。負担の話と並べて、業者の条件も押さえておきます。
水道の給水管や給水用具に手を入れる工事は、誰でも請けられるわけではありません。水道法第16条の2第1項は、水道事業者(自治体の水道局など)が「当該水道事業者の給水区域において給水装置工事を適正に施行することができると認められる者の指定をすることができる」と定めています。これが指定給水装置工事事業者です。東京都水道局は「水道管を新たに設置したり、改造工事や修繕を行うときは」この指定業者に依頼するよう案内しています。
指定を受けていない業者に頼むとどうなるか
同条第2項は、水道事業者が「当該指定を受けた者(以下「指定給水装置工事事業者」という。)の施行した給水装置工事に係るものであることを供給条件とすることができる」としています。つまり指定業者の工事であることを、水道を供給する条件にできるという規定です。
さらに第16条は、給水装置が基準に適合していないとき、水道事業者は「その者の給水契約の申込を拒み、又はその者が給水装置をその基準に適合させるまでの間その者に対する給水を停止することができる」と定めています。安い業者に頼んだ結果、やり直し工事に加えて給水停止のリスクまで負う——これが最悪の場合です。修理代を数千円浮かせて負うだけの話ではありません。
指定業者かどうかは、無料で確認できる
指定の要件は法律で決まっています(第25条の3)。「事業所ごとに、第二十五条の四第一項の規定により給水装置工事主任技術者として選任されることとなる者を置く者であること」、国土交通省令で定める機械器具を持つこと、そして欠格事由に当たらないこと。欠格事由には破産して復権していない者や、水道法違反で刑に処せられて2年を経ない者に加え、「その業務に関し不正又は不誠実な行為をするおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある者」も含まれます。
そして同条第2項が「水道事業者は……指定をしたときは、遅滞なく、その旨を一般に周知させる措置をとらなければならない」と定めているため、指定業者の一覧はどの自治体でも公開されています。東京都水道局は23区・多摩地区の一覧をPDFで出しており、新規指定と廃止・休止の届出まで毎月公表しています。「お住まいの市区町村名+指定給水装置工事事業者」で検索すれば、見積もりを取る前に名前があるかを確認できます。この制度は「平成8年の水道法改正により創設され、全国一律の要件で」運用されているので、どの地域でも同じ確認ができます。
賃貸なら管理会社が業者を手配しますが、自分で呼ぶ場合はこの確認が要ります。
出典:e-Gov法令検索「水道法」第16条・第16条の2・第25条の3/東京都水道局「水道工事のお申込先一覧(東京都指定給水装置工事事業者一覧)」(2026-09-07 確認)
よくある質問
Q. 借りている部屋で、先に業者を呼んでもいいですか。
A. 民法第六百七条の二は、通知したのに相当の期間内に修繕されないとき、または急迫の事情があるときに借主が修繕できると定めています。床から水が出続けているなら後者にあたる余地がありますが、それでも連絡は先か同時にしてください。
Q. 直るまでの家賃はどうなりますか。
A. 民法第六百十一条第一項は、借主の責めに帰することができない事由で使えなくなった部分の割合に応じて賃料が減額されると定めています。割合の決め方は条文にないので、実際には協議になります。
Q. 便器と床のすきまから漏れているようです。自分で直せますか。
A. その位置の漏れは、便器を外して排水管との接合部を扱う作業になります。宅内の排水設備を誰が扱うことになっているかは、排水管の詰まりは誰の負担かで法律上の区分を整理しています。
Q. 分譲で、原因が自分の部屋なのか分かりません。
A. 区分所有法第九条は、瑕疵は共用部分にあるものと推定すると定めています。分からない状態のままなら、出発点は共用部分側です。まず管理組合・管理会社に調査を依頼してください。
この記事で確認できなかったこと
修理の金額は書いていません。公的機関が公表している価格を確認できなかったためです。症状別の内容と目安はトイレの水漏れ修理費用と水漏れ修理の費用相場にまとめています。
保険が使えるかどうかも、契約している約款によるため断定していません。賃料の減額幅についても、条文に計算方法がないので触れていません。
まとめ
床が濡れる水漏れで最初にやることは、止水栓を閉めて、拭いて、再発するかを見ることです。止まれば給水側、流したあとに増えれば排水側、じわじわ広がるなら結露、という順に絞れます。
負担の話は法律に書いてあります。賃貸なら民法第六百六条第一項で原則は貸主、借主には第六百十五条の通知義務があり、貸主が動かないときの自力修繕は第六百七条の二の二つの場合に限られます。分譲で階下に漏らしたときは民法第七百十七条第一項と、区分所有法第九条の「瑕疵は共用部分にあるものと推定する」が出発点になります。
どちらの場合も、連絡が遅れることだけは、自分の側の落ち度として残ります。再真を撮って、その日のうちに連絡してください。
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