網戸の張り替え|賃貸なら誰が払うかは国交省ガイドラインに書いてある
網戸が破れた、たるんだ、目が詰まって風が通らない。張り替えは自分でもできる作業ですが、その前に決めておくことが二つあります。どの網を張るかと、賃貸ならその費用は誰が持つのかです。
後者は感覚で決める話ではありません。国土交通省が公表しているガイドラインに、網戸の張替えがどちら側の負担かがはっきり書かれています。この記事では、その記述と民法の条文を確認したうえで、自分でやるか頼むかの判断材料を整理します。
費用は依頼先で大きく変わります。相場の確認は、無料でできる複数社見積もりの比較が近道です。
無料でまとめて見積もり ▶賃貸なら、破れていない網戸の張替えは貸主負担
国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」は、退去時に貸主と借主のどちらが負担するかを部位ごとに整理しています。網戸はここに名前が出てきます。
賃貸人(貸主)負担の例として挙げられているもの:「網戸の張替え(破損等はしていないが次の入居者確保のために行うもの)」
理由も書かれています。ガイドラインはこの区分について「入居者入れ替わりによる物件の維持管理上の問題であり、賃貸人の負担とすることが妥当と考えられる」としています。同じ考え方で、畳の裏返し・表替え(特に破損等していないが、次の入居者確保のために行うもの)やフローリングのワックスがけも貸主負担の例に並んでいます。
逆に、破いた場合は話が変わります。ガイドラインが載せている裁判例には、網戸の穴が争点になり借主負担とされたものがあります。分かれ目は「破損しているかどうか」で、経過による劣化や次の入居者のための入れ替えではない、ということです。
出典:国土交通省住宅局「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」(平成23年8月)別表1(2026-09-05 確認)
ガイドラインが定義している「原状回復」は、借りた当時に戻すことではない
そもそも原状回復という言葉の意味が、日常語とずれています。ガイドラインはこう定義しています。
「原状回復とは、賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」
そのうえで「原状回復は、賃借人が借りた当時の状態に戻すものではないということを明確にし」と書かれています。建物の価値は住んでいるかどうかにかかわらず時間で減るものだから、という考え方です。
ガイドラインは損耗を三つに分けています。建物・設備等の自然的な劣化(経年変化)、通常の使用により生ずる損耗(通常損耗)、そして故意・過失や通常の使用を超える使用による損耗です。借主が負担するのは三つめだけ、というのがガイドラインの立場です。
もうひとつ、ガイドラインは経過年数の考え方も採っています。「賃借人の負担について、建物・設備等の経過年数を考慮することとし、同じ損耗等であっても、経過年数に応じて負担を軽減する考え方を採用した」と書かれています。破いてしまった場合でも、新品の値段をそのまま負担する形とは限らないということです。
ただし前提を書いておきます。ガイドライン自身が「あくまで負担割合等についての一般的な基準を示したものであり、法的な拘束力を持つものでもない」と断っています。契約書の特約が優先される場面もあるので、まず自分の契約書を読んでください。
出典:同ガイドライン 第1章・表2(2026-09-05 確認)
そもそも直す義務は貸主にある
退去時の負担とは別に、住んでいる間の修繕についても定めがあります。
民法第六百六条第一項「賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。ただし、賃借人の責めに帰すべき事由によってその修繕が必要となったときは、この限りでない。」
網戸が破れて虫が入る状態は、使用に必要な修繕にあたる余地があります。自分で買って張り替える前に、まず管理会社に連絡するという順番のほうが、費用の面では自然です。連絡については借主側にも義務があります(同法第六百十五条)。詳しくは賃貸と分譲で修繕費を誰が負担するかで条文を整理しています。
出典:e-Gov法令検索 民法 第六百六条・第六百十五条(2026-09-05 確認)
持ち家なら、まず網の種類を決める
自分で張り替える場合も業者に頼む場合も、最初に決めるのは網です。ここを決めずに枚数と金額だけ聞いても、比較になりません。
| 選ぶ軸 | 見るところ |
|---|---|
| 目の細かさ(メッシュ) | 一インチあたりの網目の数。数が大きいほど細かく、小さな虫が入りにくい。ただし細かいほど風は通りにくくなる |
| 素材 | 樹脂製が一般的。ガラス繊維入りや金属製は、たるみや切れへの強さが変わる。ペットの爪を想定した厚手のものもある |
| 色 | 外の見えやすさと、外から中の見えにくさに関わる。同じ網でも色で印象が変わる |
| 枚数と寸法 | 網戸の外枠の寸法を先に測る。網は幅の規格で売られているので、足りるかどうかがここで決まる |
道具は、押さえゴム(ビード)、ローラー、カッター、クリップ類です。押さえゴムは網戸の枠の溝に合う太さでなければ入らないので、古いゴムを一本持って買いに行くのが確実です。
自分でやるか、頼むかの分かれ目
- 網戸を外して平らな場所に置けるか。張り替えは寝かせて行う作業です。室内に持ち込めるなら、難易度は大きく下がります。
- 外す作業がどの高さになるか。二階の窓で、外側に身を乗り出して外すことになるなら、そこは高所の作業です。労働安全衛生規則が事業者に作業床を求めているのは高さ二メートル以上なので、目安として頭に置いてください(雨樋の修理はどこに頼むで条文を引いています)。
- 枚数。一枚と十枚では、道具代の割り勘のされ方が変わります。まとめて頼むほうが一枚あたりは下がるのが普通です。
- 枠そのものが歪んでいないか。網を張り替えても直りません。枠の交換やレールの調整が必要なら、別の作業になります。
網戸が無い窓に新しく付けたい場合は、張り替えではなく取り付けです。窓の種類とレールの有無で可否が変わるので、現物を見てもらう前提で相談してください。
誰が払うかは民法の2つの条文で決まる
網戸の張替え費用を貸主と借主のどちらが負担するかは、契約書より先に民法が枠組みを決めています。
まず第606条第1項。「賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う」。ただし「賃借人の責めに帰すべき事由によってその修繕が必要となったときは、この限りでない」とされています。原則は貸主負担で、借主に責任がある場合だけ例外という順序です。
退去時については第621条。「賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷」の原状回復義務を負うとしつつ、「通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く」と明記しています。網戸の日焼けやたるみは経年変化にあたりやすく、破れが借主の不注意によるものかどうかが分かれ目になります。この2020年4月1日施行の改正で、経年変化を除くことが条文に書き込まれました。
よくある質問
Q. 退去時に網戸の張替え代を請求されました。払う必要はありますか。
A. ガイドラインは、破損等はしていないが次の入居者確保のために行う張替えを貸主負担の例として挙げています。破いた覚えがないなら、その根拠を確認してください。ただしガイドラインに法的な拘束力はなく、契約の特約が問題になる場合もあります。
Q. 破いてしまいました。全額ですか。
A. ガイドラインは経過年数に応じて負担を軽減する考え方を採用しています。新品の金額をそのまま負担する形とは限りません。入居からの年数を含めて確認してください。
Q. 自分で張り替えて、退去時に問題になりませんか。
A. 賃貸なら、先に管理会社に連絡するのが順番です。民法第六百六条第一項は修繕の義務を原則として貸主に置いています。勝手に替えて仕上がりが問題になると、話がややこしくなります。
Q. 目の細かい網にすれば快適になりますか。
A. 小さな虫は入りにくくなりますが、そのぶん風は通りにくくなります。どちらを取るかの選択で、正解はひとつではありません。
この記事で確認できなかったこと
張り替えの金額は書いていません。公的機関が公表している価格を確認できなかったためです。ガイドラインには原状回復工事の目安単価の表がありますが、単価そのものは空欄の様式なので、金額は読み取れませんでした。
メッシュの数値と虫の大きさの対応関係についても、公的資料で確認できなかったので具体的な数字は挙げていません。網の耐用年数も同様です。
まとめ
網戸の張り替えは、賃貸か持ち家かで最初の一手が変わります。賃貸なら、破損していない網戸の張替えは国土交通省のガイドラインが貸主負担の例として挙げています。理由は、入居者の入れ替わりにともなう物件の維持管理だからです。破いた場合は借主側の話になりますが、そのときも経過年数を考慮する考え方が採られています。
住んでいる間の修繕は、民法第六百六条第一項で原則として貸主の義務です。自分で買いに行く前に、まず連絡してください。
持ち家なら、決めるのは網の目の細かさ・素材・色・寸法と、押さえゴムの太さです。作業そのものは難しくありませんが、二階の窓で外側から網戸を外す場面だけは、高さの話になります。そこだけは無理をしないでください。
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